「将棋」は最高の知育?幼児期から始めるメリットと脳への驚きの効果【最新研究】

「将棋」は最高の知育?幼児期から始めるメリットと脳への驚きの効果【最新研究】


「うちの子、落ち着きがないけれど大丈夫かな?」 「子どもたちに『考える力』をつけてあげたい」

そんな風に考えているパパ・ママに、今こそおすすめしたいのが、日本の伝統文化である 「将棋」 です。

「えっ、将棋? 難しそうだし、まだ早いんじゃ…」と思われるかもしれません。

実は、世界中の教育現場では、「チェス」や「ボードゲーム」 が子どもの知能を高めるツールとして広く活用され、多くの研究が行われています。

「でも、それってチェスの話でしょ?」と思うなかれ。 将棋とチェスは、同じ古代インドのゲーム(チャトランガ)をルーツに持つ、いわば 「兄弟」 のような関係です。どちらも「運」の要素がなく、お互いに盤面をすべて見渡せる状態で、論理的な思考のみで勝負が決まる 「アブストラクトゲーム(完全情報ゲーム)」 というジャンルに属します。

つまり、チェスで証明されている「脳への効果」は、構造がそっくりな将棋にもそのまま当てはまる と考えられているのです。さらに将棋は「取った駒を自分の駒として使える」という独自のルールがあるため、チェス以上に複雑で深い読みが必要とされ、脳への刺激はさらに大きいとも言われています。

今回は、世界中の最新研究(エビデンス)をもとに、この「将棋」が幼児期にもたらすメリットについて解説します。

🧮
基礎力UP
算数・数学的思考
🤝
相手を理解
社会性・優しさ
🧠
我慢する力
実行機能

1. 算数が得意になる?「数」と「論理」の力が育つ

将棋盤を挟んで向かい合い、駒を動かす。このプロセスには、実は算数の基礎となる要素がたっぷり詰まっています。

遊びながら「数」の感覚が身につく

Bernerら(2024)の研究によると、すごろくのようなマス目を使ったゲームで遊んだ幼児は、そうでない子に比べて 「数の概念(順序や量)」の理解が早かった という結果が出ています。

将棋も同様です。

  • 「歩を1つ進める(数の順序)」
  • 「相手の駒の数を数える(基数)」
  • 「ここで交換したら損か得か(引き算・足し算)」

このように、遊びの中で自然と数を扱い、計算する経験を積み重ねることで、算数への抵抗感がなくなり、論理的に考える土台が作られます。

チェスの研究が示す「将棋」の可能性

「チェスを習っている子は数学の成績が良い」という話を聞いたことはありませんか? SalaとGobet(2017)の研究では、チェスの指導を受けた小学生は、そうでないグループに比べて 数学的な課題解決能力が向上した と報告されています。

なぜでしょうか? 研究者たちは、チェス(そして将棋)と数学が 「アイソモーフィック(同型的)」 な関係にあると指摘しています。

  1. 空間認識: 盤上の位置関係を把握する(幾何学)
  2. 論理的推論: 「もしこうしたら、次はこうなる」と仮説を立てて検証する
  3. 記号操作: 駒の動きや価値をルールに従って操作する

これらはすべて、数学の問題を解くときに使う脳の働きそのものです。将棋は、この「数学的な脳の使い方」を、遊びを通じて自然にトレーニングできるツールなのです。

ℹ️ ポイント

将棋は「勉強」としてではなく、「遊び」として楽しみながら、将来の理数系科目に必要な論理的思考力の種をまくことができます。

2. 「相手の気持ち」がわかる優しい子に

将棋の最大の特徴は、対戦相手がいることです。そして、勝つためには 「相手の視点」 に立つことが絶対に欠かせません。

自分の世界から抜け出す練習

幼児期の子どもは、まだ「自分が見ている世界」と「他人が見ている世界」が違うことを理解するのが苦手です(自己中心性)。

しかし、将棋では「自分がこう指したら、相手はどう思うかな?」「相手は何を狙っているのかな?」と、常に相手の立場になって考える必要があります。

Aslanら(2016)の研究では、チェスのトレーニングを受けた6歳児は、受けなかった子どもたちと比較して、 「心の理論」 のテストおよび創造性のテストにおいて有意に高いスコアを記録しました。

「心の理論」を育む

「心の理論(Theory of Mind)」とは、他者の信念や意図を理解する能力であり、社会生活を営む上で不可欠なスキルです。

将棋を通じて「相手の心を読む」練習をすることは、お友達の気持ちを理解したり、思いやりのある行動をとったりする社会性を育むことにつながります。幼児期という、自己中心的な世界観から脱却し始める時期に将棋に触れることは、他者理解の社会的認知スキルを育む強力な触媒となり得るのです。

3. キレない・我慢できる子に(実行機能の発達)

「すぐに手を出してしまう」「待てない」といった悩みにも、将棋は効果的かもしれません。

脳の司令塔「前頭前野」を刺激する

将棋を指すとき、脳の中ではすごいことが起きています。

  • 抑制機能: 「あ、これ指したい!」という衝動を抑えて、「いや、待てよ…」と踏みとどまる。
  • ワーキングメモリ: 盤面の状況を一時的に記憶し、頭の中で駒を動かしてシミュレーションする。
  • 認知的柔軟性: 相手が予想外の手を指してきたときに、パニックにならずに作戦を修正する。

これらは 「実行機能」 と呼ばれ、脳の司令塔である前頭前野が司る能力です。 Blasco-Fontecillaら(2019)のシステマティックレビューでは、ボードゲームを用いた介入が、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状改善や、実行機能の向上に寄与する可能性が示されています。

将棋は「脳の筋トレ」

じっと座って考え、相手の手番を待ち、負けてもぐっとこらえる。将棋は、感情をコントロールし、自分を律する力を鍛える最高のトレーニングになります。

4. 親はどう関わればいい? 効果を高めるコツ

「よし、将棋をやらせよう!」と思っても、ただ盤を与えて放置するだけでは効果は半減してしまいます。 Putraら(2021)やWangら(2024)の研究が示唆するように、ゲームベース学習の効果を最大化するには、適切な指導と環境が不可欠です。

重要なのは、親の 「フィードバック」 です。

🐣

まずは「駒遊び」から

いきなり本将棋は難しいです。「はさみ将棋」や「山崩し」、あるいは「どうぶつしょうぎ」のような簡易版から始め、駒に触れる楽しさを教えましょう。

🗣️

問いかけで思考を促す

「どうしてその手を指したの?」「相手(パパ・ママ)は何を狙ってると思う?」と優しく問いかけ、子どもに考えを言葉にさせましょう。思考プロセスを言語化させることが重要です。

👏

プロセスを褒める

勝敗だけでなく、「よく考えたね」「最後まで諦めなかったね」と、考えた過程(プロセス)を具体的に褒めることで、学習意欲と自己肯定感が高まります。

まとめ

将棋は、単なる「昔の遊び」ではありません。最新の研究によって、幼児の脳と心を育むための非常に合理的なツールであることがわかってきました。

将棋は、単なる「昔の遊び」ではありません。最新の研究によって、幼児の脳と心を育むための非常に合理的なツールであることがわかってきました。

  1. 認知的メリット: 数や論理に強くなる。
  2. 社会的メリット: 相手の視点に立ち、思いやりの心が育つ。
  3. 行動的メリット: 我慢する力、考える力が身につく。

デジタルゲームも楽しいですが、たまには親子で膝を突き合わせ、パチリと駒音を響かせてみませんか? それは「知の格闘技」であると同時に、親子の絆を深め、子どもの全人的な成長を支える素晴らしい時間になるはずです。

参考文献リスト