「3歳の子ども、何時に寝かせるのが正解なんだろう?」 「毎日寝る時間がバラバラで、将来に影響がないか心配…」
そんな悩みをお持ちのパパ・ママも多いのではないでしょうか。 3歳児の「何時に寝るのがよいか」を考えるとき、大事なのは“時刻そのもの”よりも「十分な睡眠時間」と「毎日ほぼ同じ時間に寝ること」です。
この記事では、乳幼児の睡眠研究をもとに、3歳前後の就寝時刻の目安と、その根拠となる論文を紹介します。
- 3歳児に必要な睡眠時間は1日10〜13時間
- 理想的な就寝時刻は19時〜21時
- 「寝る前のルーティン」が子どもの発達に重要
3歳児に必要な睡眠時間とは
まず押さえておきたいのは「3歳児は1日にどれくらい寝るとよいのか」という全体量です。
Chaputらによる0〜4歳児を対象とした系統的レビューでは、3〜4歳児では1日合計10〜13時間の睡眠が、肥満リスクや情緒・行動など多くの健康指標と良好に関連するとまとめられています。
カナダのオタワ大学などの研究チームによるこのレビューは、世界23か国・約15万人のデータを含む69本の研究を整理したもので、「短すぎる睡眠」は肥満、感情調整の難しさ、行動問題などと関連しうると指摘しています。
何時に寝るのがよいのか
では、実際の「就寝時刻」はどう決めればよいのでしょうか。
睡眠“時刻”だけを扱った3歳児限定の決定版研究はまだ多くありませんが、子ども・思春期を対象にした系統的レビューでは、「遅い就寝」は情緒・認知・食行動などさまざまな指標の悪化と関連しやすいと報告されています。
また、就学前児(おおむね3〜5歳)の国際比較データを論じたイギリスのアストン大学の研究者Agarの論文は、地域差はあるものの、多くの国で「合計睡眠時間10時間以上」を確保しつつ、夜の就寝は夕方〜夜の比較的早い時間帯に集中していると述べています。
日本の生活リズムで、朝6〜7時台に起きると仮定すると、以下の条件から、多くの家庭では「19〜21時までに寝る」くらいが無理のない目安になります。
- 昼寝を含めて10〜13時間寝る
- 夜の睡眠をメインにする
「遅い就寝」は、子どもの情緒や認知機能、食行動などに悪影響を与える可能性があります。できるだけ早めの就寝を心がけましょう。
「規則的なリズム」と発達
就寝時刻以上に重要なのが「毎日同じような時間に寝ること」と「寝る前の一貫したルーティン」です。
アメリカのセントジョセフ大学やフィラデルフィア小児病院の研究チーム(Mindellら)のレビューは、幼児期に規則的な寝る前習慣(歯みがき、パジャマ、読み聞かせなど)がある子どもほど、入眠が早く、夜間の覚醒が少なく、日中の行動も安定しやすいとまとめています。
さらに、アメリカのストーニーブルック大学の研究チーム(Haleら)による縦断研究では、就学前児の「言語的な寝る前ルーティン(本の読み聞かせなど)」が、その後の睡眠時間だけでなく、行動・健康指標とも良好な関連を持つことが示されています。
ここで、おすすめの「寝る前ルーティン」の例をご紹介します。
お風呂
ぬるめのお湯でリラックスさせます。
パジャマに着替える
「もう寝る時間だよ」という合図になります。
歯みがき
毎日の習慣として定着させましょう。
絵本の読み聞かせ
静かな時間を作り、入眠モードへ切り替えます。
消灯・就寝
部屋を暗くして、静かに寝かしつけます。
睡眠とその後の発達・行動
睡眠は「その日の機嫌」だけでなく、数年先の発達にも関係します。
ヨーロッパ5コホートを統合したメタ分析では、就学前期の睡眠時間が短い子どもほど、その後の行動問題や認知面でのスコアが低くなる傾向が報告されています。
また、韓国の誠信女子大学の研究チーム(Suhら)による別の縦断研究では、乳幼児期を通して「夜の睡眠と総睡眠時間が長く・一貫している」「昼寝は短めで安定している」子どもは、2歳・4.5歳での認知検査の成績が良いことが示されています。
実務的なまとめ:3歳児の就寝時刻を決めるときの考え方
以上の研究を踏まえると、「3歳児は何時に寝るのがよいか?」に対する実務的な答えは次のようになります。
- 目標とする1日の総睡眠時間は10〜13時間(昼寝込み)。
- 朝の起床時刻から逆算して、夜は19〜21時までに寝られるリズムをめざす。
- 何時に寝るかより、「毎日ほぼ同じ時間に寝ること」「寝る前の静かなルーティンを決めて繰り返すこと」が、睡眠の質と発達の両方にプラス。
個々の子どもの気質や保育園・家庭のスケジュールによって最適な形は少しずつ異なりますが、「早めで規則的な就寝」と「十分な総睡眠時間」をセットで意識することが、現時点の研究から見える一番のポイントと言えます。
昼寝をしなくなってきたのですが、大丈夫でしょうか?
3歳頃から昼寝をしなくなる子も増えてきます。その場合は、夜の睡眠時間を長めにとって、トータルで10〜13時間を確保できれば問題ありません。夕方に眠くて機嫌が悪くなるようなら、早めに寝かせるようにしましょう。
どうしても21時を過ぎてしまいます。
共働き家庭など、どうしても遅くなることもあると思います。その場合は、起床時間を少し遅らせて睡眠時間を確保するか、休日にリズムを崩さないようにすることが大切です。また、寝る前のルーティンを短縮しても、「いつもの流れ」を守ることで、子どもは安心しやすくなります。
参考文献
- Jean-Philippe Chaput et al. “Systematic review of the relationships between sleep duration and health indicators in the early years (0–4 years).” BMC Public Health, 2017.
- Natalie D. V. Mann et al. “Sleep timing and health indicators in children and adolescents: a systematic review.” Sleep Medicine Reviews, 2022.
- Georgie Agar. “Preschool sleep recommendations are WEIRD.” Sleep, 2025.
- Jodi A. Mindell et al. “Benefits of a bedtime routine in young children: Sleep, development, and beyond.” Sleep Medicine Reviews, 2017.
- Jodi A. Mindell et al. “Bedtime routines for child wellbeing and development.” Zero to Three Journal, 2018.
- Lauren Hale et al. “A longitudinal study of preschoolers’ language-based bedtime routines, sleep duration, and well-being.” Journal of Family Psychology, 2011.
- Binter et al. “Sleep duration in preschool age and later behavioral and cognitive outcomes: an individual participant data meta-analysis in five European cohorts.” European Child & Adolescent Psychiatry, 2023.
- Sooyeon Suh et al. “Trajectories of reported sleep duration associate with early childhood cognitive development.” Sleep, 2022.