「家事をしている間、ついスマホを見せてしまう…」 「動画を見せすぎると、言葉が遅れるって本当?」
そんな不安を感じているパパ・ママは多いはずです。 デジタル機器は今や生活の一部。完全に切り離すことは難しいですが、子供への影響は気になりますよね。
この記事では、最新の研究データをもとに、スクリーンタイム(画面を見る時間)が子供の発達に与える影響と、今日からできる「上手な付き合い方」について解説します。
- 長時間の視聴は「言葉の遅れ」のリスクを高める可能性があります。
- 特に「2歳未満」と「一人で見せっぱなし」には注意が必要です。
- 親が一緒に見て会話する「共同視聴」なら、メリットに変えられます。
1. 本当に「言葉の遅れ」につながるの?
結論から言うと、多くの研究が 「長時間のスクリーンタイム(画面を見る時間)と言葉の発達の遅れには関連がある」 と報告しています。
特に注意が必要なのは、2歳未満の子供です。最新の研究によると、1歳など早期からスクリーンに触れ始めた子供や、1日に長時間視聴している子供ほど、言葉の遅れのリスクが高まることがわかっています。
例えば、ドバイで行われた最近の調査では、1日のスクリーンタイムが4時間を超える子供の約40%に言葉の遅れが見られました。また、この影響は男の子の方が女の子よりも受けやすいというデータも報告されています。
画面を見ている間、 親子の会話や現実世界での遊びの時間が奪われてしまうこと が大きな理由です。子供は本来、親との対話や遊びを通じて言葉を学びますが、動画視聴がその機会を置き換えてしまうのです。
2. 「見せ方」で変わる? NGな視聴とOKな視聴
「動画=すべて悪」と決めつける必要はありません。研究データは、 「どのような状況で」「何を見ているか」 によって、子供への影響が大きく変わることを示しています。
NGな視聴 ⚠️
- 受動的視聴(一人で見せっぱなし)
- バックグラウンドTV(つけっぱなし)
- 親子の会話が減る
OKな視聴 ✅
- 共同視聴(親子で一緒に見る)
- 教育的コンテンツを選ぶ
- 見た内容について会話する
⚠️ NG:ただ見せっぱなしにする「受動的視聴」
最も避けるべきなのは、親が関与せず、子供一人で画面を眺め続ける「受動的視聴(パッシブ・スクリーンタイム)」です。一方的に流れてくる映像を眺めるだけの状態は、子供の脳の認知機能や社会性の発達にマイナスの影響を与える可能性が高いとされています。
また、 「つけっぱなしのテレビ(バックグラウンドTV)」 も要注意です。誰も見ていないのにテレビがついている環境では、親から子供への語りかけが減り、親子のやり取りが阻害されることがわかっています。これは「テクノフェレンス(テクノロジーによる妨害)」と呼ばれ、子供の語彙力低下につながる要因の一つです。
✅ OK:親子で楽しむ「能動的視聴」と「教育的コンテンツ」
一方で、希望もあります。親が一緒に画面を見ながら、「これワンワンだね」「赤いね」と話しかける 「共同視聴(コ・ビューイング)」 を行うことで、言葉の発達への悪影響を減らせることがわかっています。
また、教育的な質の高いプログラムであれば、語彙を増やす助けになる場合もあります。つまり、スマホやテレビを「子守り」として丸投げするのではなく、 「親子のコミュニケーションツール」 として使うことが鍵となります。
3. 脳への影響と「実行機能」
言葉だけでなく、脳の「実行機能」への影響も注目されています。 実行機能とは、集中力、我慢する力(抑制機能)、計画を立てる力など、将来の学習能力や社会生活の基盤となる能力です。
研究によると、過度なスクリーンタイムは、この実行機能の発達に悪影響を与える可能性があります。特に、エンターテインメント性の強い動画や、展開の速すぎるアニメーションは、子供の注意力を散漫にさせるリスクが指摘されています。
一方で、教育的なアプリやゲームなど、子供が考えながら操作する「能動的視聴(アクティブ・スクリーンタイム)」は、一部の認知スキルに良い影響を与える可能性も示唆されています。
4. 今日からできる! デジタル機器との上手な付き合い方 3つのルール
研究結果を踏まえ、家庭で実践できる具体的なルールをご提案します。
2歳まではできるだけ控える
脳が急速に発達する時期です。画面よりも、実体験や人との触れ合いを優先しましょう。ビデオ通話はOKです。
2歳〜5歳は「1日1時間以内」
質の高い番組を選び、ダラダラ見を防ぐために時間を決めましょう。
「一人で見せない」を鉄則に
できるだけ親も一緒に見て、「何が映ってる?」「面白いね」と会話をしましょう。
5. 最後に:バランスがすべて
デジタル機器は現代生活の一部であり、完全に排除することは困難です。また、興味深いことに、家庭内で複数の言語(マルチリンガル)を話す環境にある子供は、言葉の遅れのリスクが低いという研究結果もあり、言語刺激の多様性が重要であることも示唆されています。
大切なのは、スクリーンタイムが 「親子の触れ合い」や「外遊び」、「十分な睡眠」の時間を奪わないようにすること です。
もし、「最近スマホを見せすぎているかも」と感じたら、まずは1日30分、画面を消して絵本を読んだり、一緒におもちゃで遊んだりする時間を増やしてみてください。ある研究では、6ヶ月間デジタル機器の使用を控えたことで、言葉の遅れがあった子供の約36%に改善が見られたという報告もあります。
デジタル機器は便利な道具です。その特性を理解し、支配されるのではなく、親が主導権を持って上手に活用していきましょう。
参考文献
- Myrissa M. Manusis et al. “Associations Between Screen Use and Child Language Skills: A Systematic Review and Meta-analysis.” Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics, 2020.
- Eleni G. Spanaki et al. “The Relationship between Language and Technology: How Screen Time Affects Language Development in Early Life—A Systematic Review.” Brain Sciences, 2023.
- Unknown authors. “Examining the relationship between language development, executive function, and screen time: A systematic review.” PLOS ONE, 2024.
- Jean-Philippe Chaput et al. “Correlates of screen time in the early years (0–5 years): A systematic review.” Obesity Reviews, 2023.
- A. A. Albelali et al. “Relationship Between Speech Delay and Smart Media in Children: A Systematic Review.” Cureus, 2023.
- Georgios Korres, Melina Kourklidou, Giorgos Sideris, et al. “Unsupervised Screen Exposure and Poor Language Development: A Scoping Review to Assess Current Evidence and Suggest Priorities for Research.” Cureus, 2024.
- P. J. Myburgh et al. “The influence of screen time on children’s language development: A scoping review.” South African Journal of Communication Disorders, 2022.